東ティモール首都ディリで、西部エルメラ県で収穫されたコーヒー豆を手にする「ピースウィンズ・ジャパン」の金丸智昭さん |
大統領襲撃事件が発生した東ティモールでは、非常事態宣言が延長され、今も政情不安が続く。国内避難民キャンプが広がる首都ディリでは、若者の失 業率が50%以上といわれる。将来への展望を見いだしにくい中で、日本のNGOが「輸出産品の主力」といわれるコーヒーの生産者支援を続け、時間のかかる 国づくりの一端を担っている。 (ディリで、吉枝道生)
同国が石油・天然ガス以外の輸出産品として力を入れているのが、コーヒーだ。国民の四人に一人がコーヒーにかかわって収入を得ているといわれるほど。
NGO「ピースウィンズ・ジャパン」東ティモール事務所では、二〇〇二年からコーヒー生産者の支援を続けている。当初はさまざまな収入向上事業を試みたが、商品を作っても国内に購買力がなく、結局は輸出産品に目を向けたという。
支援しているのは、ディリから車で二時間ほどのエルメラ県レテフォホ郡にある六つの村で、コーヒー生産を手がける二百三十三世帯が対象となっている。
同国のコーヒーは、シェードツリー(日陰樹)と呼ばれる木々に覆われた森の中で育ち、化学肥料や農薬は一切使われていない。完全な有機農産物であり、品種改良も行われていない希少な品種という。
国際競争に勝ち抜くには、品質で勝負するしかない。高品質のコーヒーをつくり、フェアトレード(公正な貿易)商品として輸出する。「専門家にも品 質が評価されるようになった」と、現地事業責任者の金丸智昭さん(41)は話す。収穫や精製方法などをきめ細かく指導して、品質管理に力を入れてきた成果 だ。最初は年三トンだった輸出量も豊作の年には二十六トンまでになった。日本の大手ファミリーレストランも協力して購入してくれている。
しかし、現地での成果はなかなか目には見えにくい。生産者の約六割は読み書きができず、計算もできない。収入がどのように増えているのかも分かりにくい。それでも「自分たちのコーヒーが遠い国で喜ばれているということが誇りにつながっている」という。
ディリでは、仕事のない地方から若者が流入して失業率をさらに押し上げる。二十年以上にわたってインドネシアに併合されていた同国は、行政執行能力の高い人材が不足しており、国家運営にも苦しんでいる。地方では、教育、医療、インフラなどの整備が遅々として進まない。
金丸さんは「今は国際治安部隊などの圧倒的な武力で抑えているが、火種をずっと抱えたままの状態。課題は山積しているが、長期的に多様なプロジェクトを進めていくしかない」と説明する。そのためにも、地方が力をつけることが大切だという。
昨年は天候の関係で不作だったが、「ことしは豊作が期待できます」と目を細める。コーヒーの収穫が始まるのは、五月からだ。
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